多核金属錯体は、金属イオンの種類・核数に応じた特異なスピン状態・反応性・光物性等を発現することが可能な極めて魅力的な分子群である。本新学術領域研究では、多核金属錯体に非対称性を積極的に導入することで新規機能性分子の創製を目指す。そのために、多核構造内に複数種類の金属イオン種を導入した集積体とすることで、単一の金属イオン種により構築される多核錯体では到達しえない電子状態を構築し、それに伴う物性発現・新奇機能を開拓する。具体的な研究対象としては、これまでの研究により極めて良好な多電子酸化還元触媒として機能することが見出された金属五核錯体を用いる。この金属五核錯体の分子骨格内には配位環境の異なる2種類金属イオンサイトが存在する。そこで、これらの2種類の金属イオンサイトに対し複数種類の金属イオンを精密に集積させる手法を確立し、非対称性の導入を利用した多核金属錯体の電子状態ならびに物性制御を達成する。

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